今回は前回に続き、実際のオンラインレッスンをどのように進めていくのか、いろいろと解説を交えてお話ししていきたいと思います。
前回は入門・初級編のレッスンについてでしたが、今回は中級・上級編のレッスンについてです。
ピアノを習ったことがあったり、基礎がある程度できている方などは、ぜひ参考にしてみていただければと思います。
1. 美しい音色を出すために
皆さんはピアノという楽器のどんなところに魅力を感じていますか?
楽器の王様と言われるピアノは、ほかの楽器と違い、一台で何役もこなすことのできる楽器です。
主役にもなれば、ときに伴奏になることもあり、またときには何個もの楽器を鳴らすオーケストラ規模の曲を奏でることもできる…
ピアノの可能性は幅広く、それだけに世界中で愛され続ける楽器でもあります。
ピアノの音色もまた、繊細で儚いものでありながらも、ダイナミックな重厚感を出すこともでき、テクニックを極めていくほどに奥の深さに気づかされると思います。
そして、音色をいかに表現するか、ということと常に、ピアニストたちは日々向き合わされます。
美しい音色を出すためにはどうしたらよいでしょうか。
まず、身体の無駄な力を抜いていくことがとても重要になってきます。
手首や肘、肩などに力が入っていると、音は伸びやかな響きを失ってしまい、硬く詰まったような音になってしまうのです。
空間に抜けるような響きを出すためには、手の甲の関節をしっかりと立たせてアーチ型をつくり、そこを支えに指を動かしていくことで、手首や肘、肩の力を抜くことができ、伸びやかな音を出すことができます。
また、手の甲の内側のアーチがしっかり作れるようになると、音の強弱やフレーズの作り方、様々なニュアンスを弾き分けたり、コントロールすることができるようになってきます。
手の形や癖などは人によって様々なので、このアーチの形を確立させるまでには、とても時間がかかる場合もありますが、日々少しずつ意識していくことで確実に変わっていき、ある日気がついたら自然と力が抜けて弾きやすくなっていた、というときが来ます。
表現の幅を広げていくためにも、ぜひ取り組んでみていただきたいと思います。
脱力ができるようになると、身体全体がリラックスして弾けるようになってきます。
そうなると、自分の表現したいような音色やニュアンスがスッと出せるので、より自由にピアノが弾けるようになり、深く音楽を楽しむことができるようになっていきます。
そうなってくると弾き方の基礎はしっかりできているため、今度は自分の身体や手に沿った弾き方へとステップアップしていくのですが、基礎が身に付いていると、感覚的に自分に合う弾き方がわかってくるようになるので、ますますピアノを弾くことがラクになっていきます。
オンラインレッスンでは、画面越しのレッスンとなるため、このような脱力法や手の形などを直接手取り足取りはできませんが、その分細かく説明しながら進めていきます。
一見、距離感はあるようにも感じますが、スクリーン越しでのやりとりは、相手へ向ける集中力が強まる傾向もあるため、深い理解が得られるメリットも充分にあるでしょう。
2.曲の理解を深める
前回の記事、"オンラインピアノレッスンのススメ(入門・初級編)" で、楽譜をきちんと丁寧に読むことの大切さをお伝えしましたが、ある程度音符が読めるようになってくると、より深く楽譜を理解していくために学ぶことも多くなっていきます。
楽譜は作曲家の手紙や小説のようなものです。
作曲家が伝えたかったことが、楽譜には様々な形で描き込まれているのです。
実際にどのようなものが書き込まれているのか、解説を交えながらお話ししていきたいと思います。
・記号
楽譜の中の記号は、フォルテやピアノ、アクセントやスラー、スタッカートなどを指します。
これらはピアノを習い始めて最初のほうに勉強するものです。
少し曲が難しくなってくると、スフォルツァンドやフェルマータ、テヌートなど、表現の幅を広げる記号が増えていきます。
・楽語
楽語というのは、楽譜に書き込まれている様々な言葉のことです。
crescend/クレッシェンド(だんだん大きく)や、ritardand/リタルダンド(だんだんゆっくり)、a tempo/ア テンポ(もとの速さで)、などなど、中級以上の楽譜になってくると、こういった楽語が多く出てくるようになってきます。
この楽語の多くはイタリア語ですが、ときにドイツ語やフランス語、作曲家によっては英語で書かれていたりと様々です。
楽語は、記号以上に多岐にわたるので覚えるのも大変ですが、ひとつひとつ覚えていくことで、作曲家の意図やメッセージが読み取れるようになっていくので、楽譜を読むことがより楽しくなっていくでしょう。
まさに作曲家の手紙を読んでいるような気持ちにもなっていきます。
・楽典
音楽記号や楽語、音符などの知識を理論的に理解していく過程での学びを楽典と言います。
"音楽の文法"のようなもので、より一歩読譜力をつけるために、音楽を楽譜の形にしていく際の規則や決まりごと、成り立ちなどを学んでいきます。
曲が難しくなってくると、その曲の調性判断や、和声の成り立ちなどを学んでいくことが必要になってきます。
調性や和声の理論を理解することで、曲への理解が深まり、音楽的にも大きな表現ができるようになるからです。
・アナリーゼ
さらにもう一歩深めると、アナリーゼという勉強に入ります。
これは音楽学校などに入ると学ぶもので、楽譜の分析のことを指します。
楽譜に書き込まれている音符、記号、楽語や調性、旋律、和声…ひとつひとつに意味があり、それを分析すればするほど、気が遠のくほどの奥行きがあることを知ることになります。
数学に通じる部分もあり、文学に通じる部分もあります。作曲家の時代背景に沿って作品の形式や表現も変化しているため歴史にも繋がっており、その学びに終わりはありません。
専門的に勉強しないかぎり、そこまで深く学ぶ機会はないかもしれませんが、興味がある方は、ぜひ多方面から楽譜を学び、いろんな発見に繋げていってみてくださいね。
より作曲家たちの心情や時代に近づくことができ、その学びは自分自身の人生にも、大きな影響を与えてくれるかもしれません。
こういった、楽譜の理解を深めていく勉強は、オンラインレッスンにもとても適しています。
曲の背景への理解を深めたい方は、ぜひこういった学びも実技と同時に進めていってみてくださいね。
3.人前で演奏することの大切さ
ピアノの上達のためには、本番を踏むことも大切な鍵になってきます。
その理由は、一つには本番という目標を持つことでモチベーションを上げることができるからです。
大人になってからピアノを始めると、忙しさもあってか、趣味として自分で楽しめるくらいでいいと、発表会などに出ない方もよくいらっしゃいますが、せっかく始めたからには、やはり披露する場でひとつの形にするということに挑戦していただきたいと思います。
広いサロンやホールで弾くピアノの響きや、本番での緊張感は、普段の生活では経験することのできないものです。
そこで得られるものは、想像する以上にとても大きいのです。
そして、これは本番を経験すると分かることなのですが、本番前よりもグンと一段上達していることに気がつくことがあります。
人前でなにかを表現する、ということは、普段の数倍以上、自分自身に向き合う集中力が上がります。普段の練習では意識できない部分を心身ともにフルに使うためです。
数ヶ月の練習でも得られないものを、本番という舞台を経験することで得ることができるため、何かしらの変化を感じることができるのです。
とくに、ピアノという楽器は一人で弾くことが多いと思います。
たった一人で舞台に立つ、という経験は恐いものでもありますが、自分自身の殻を大きく破るきっかけにもなってくれるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、中級・上級編のレッスンについてお話ししてみました。
少し難しい内容もあったかもしれませんが、ピアノという楽器、そして音楽の奥深さを感じとっていただけていたら嬉しいです。
ぜひ、レッスンの参考にされてみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。